山楽会 第5回矢作川森の健康診断に参加

雑誌「グリーンパワー」より抜粋
「おっ、そこ、動いとる」、「どれどれっ」声が飛び交う。アスファルトの上でピンセットを手にした大人たちが腹ばいになっている。白いビニールの上に広げられた腐葉土や土くれをほじくっては凝視し、わずかに動くミミズやダニの類を素早く採取している。「虫よりもあんたらの方がよっぽど面白いわ」とギャラリーが冷やかす。そこへ森の健康診断を終えた人々が次々と戻ってくる。
●出発
 6月6日、朝には上がるはずの雨がまだ残っていた。今年の森の健康診断は、毎回変わる天気予報に一喜一憂した。それでも、開会式が始まる頃には止み、出発する頃には晴れ間が見え出した。「5年もやれば一度くらい降られてもしょうがない」と達観したようなことを口では言っても、これまでの準備や今年初めてチームリーダーをつとめる新人たちの意気込みを思うと胃がキリキリした。
 「好奇心の塊となって五感で森を感じよう。地元の人たちと交流して山村の実態や林業の現状を知ろう。調査とデータで科学的に森の姿を知りそれを伝えよう。効率を追わず、自らが楽しみながら気づきと学びの輪を広げよう。」開会式ではそんな挨拶をして全員を送り出した。遠くは北海道や鳥取県からの265人が39チームに分かれ出発するのを見届けるとお日さまも顔を覗かせた。何やら安堵した。あとは、無事故を祈るだけだ。
毎回の規模は、基本的にリーダーの立候補数で決まる。これまで参加者の数がそれを上回り、あわててリーダーを募りそれでも足らなくてやむなく足切りをすることが続いていた。1チーム8人までを原則とし、今回は平均7人となった。 (中略)
●新米チームリーダー
 午後2時、本部の電話が鳴った。電話口の向こうが少しあわてている、緊張が走った。「もしもし、どうした?」。「とよた旭高原山楽会」のNさんからだった。
 この1月に発足したグループ「とよた旭高原山楽会」のメンバーはほとんどがリーダー初体験だ。中でもNさんは一番若い20歳台の新米リーダーだ。1地点目に時間をかけ過ぎて、昼食を終えたら2時近くになった。3時過ぎには現場を引き揚げることになっているので、2地点目に行くかどうか迷っての電話だった。事故の電話でなくて良かったと胸をなでおろした。「まず、見るだけでもいいから2地点目まで行って、そこでみんなの意見を聞いてみたら?たぶん『やりたい』ということになると思うよ。2地点目だからみんなはもう要領が分かっているからリーダーは見ているだけでいいはず。」と答えた。
 片付けも終わり振り返りの会の時、ほかのリーダーたちに交じってNさんの顔が見えた。「どうでした?」「みんなでテキパキと全部やっちゃえましたよ。私は眺めているだけ。40分くらいでできちゃった。」けろりとしていた。山楽会では定例会の間伐作業の後に毎回「森の健康診断リーダーごっこ」を繰り返してきたという。「一人平均8回はやったかな」との報告に、先輩達も脱帽。リーダー研修まで楽しんでしまう魂こそが森の健康診断の真骨頂だ。 (後略)
矢作川森の健康診断実行委員会 矢森協代表のご好意により転載

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